留学・イギリス生活

イギリスに来てからの1ヶ月を振り返る

ただいま水曜の夜10時

ラボの実験時間の割り当ての都合で、木金が休みになるので、水曜の夜はふっと肩の力が抜ける。

今日で日本をたってから丸1ヶ月になるので、自分の思考の整理を含めてそれまでの時間を振り返る。

イギリスの社会システム

自分でも驚いたのは、イギリス社会に自然と馴染めたことであった。

コロナ対策で人と話す機会は少ないが、公共料金の支払い・税金・ラボでの仕事などは特に困ることがなかった。

これはイギリスの社会システムが外から来た人にも分かりやすいからというよりも、ネットで多くの情報にアクセスできることの方が大きいように思われる。

おかげで渡英後すぐ研究活動が始まり、合間を見つけてちょくちょく買い物にいくだけで生活に必要な物が揃った。

というより、出国直前に母に色々持たされた物が大いに役立ったのと、家具家電備えつきのアパートだったことも影響している。

研究を取り巻く人

研究においては日本人の先輩がラボにおり、その方とテーマが近いため、大変細かく面倒を見てもらえている。

自分の仕事もあるのに多くのリソースを割いてもらっていて本当に頭が上がらない。

ラボの教授とはまだ一度しか直にはあっていないが(しかも休日の散歩に誘ってもらった)、チャットなどで毎日連絡を取っているため遠い気がしない。

教授も生活の立ち上げを気にかけてくれ、自転車で気持ちよく来れる通学ルートまで教えてくれた。

ラボメンバーが多い分、ラボでは民主的にルールを定めることが多い。

ミーティングの時間やゴミ出し当番などは、誰が言い出すでもなく問題提起され、言った人がコンセンサスを取って実行に移されていく。

人一人の主張は強いが、メンバーは決まったことには従うので、自制心が強いと感じた。

研究の状況

始まったばかりなので仕込み的な物が多く、データがバンバン出ているという気はしない。

それでも過去の研究活動のどの時期よりも実験している自負はある。

家族が渡英するまでの期間は出来るだけ時間を使おうと決めていたから頑張れたが、ロックダウンの影響もあり、1月後半まで渡英を延期するかどうかという話をしているので、そこまで伸びても頑張れるかどうかはわからない。

でも4ヶ月も集中してやれたらいい習慣になるのではないかと楽しみでもある。

研究は新しいことを始めたので、これまで何がわかっていて、何を見つけると新しいのかという区別をつけるための情報整理にも時間を割いた。

研究テーマが近いポスドクの方2人と進めているので、日常的なディスカッションが、先行研究に対する理解が足りているかを試す場になっている。

改善点としては、原理原則をもっと考えながら・調べながら進める必要がある。

新しい操作を学ぶ時には言われたように手を動かせばデータが出るが、その背景をよく理解していないと次から独力でやることや、問題がおきた時の解決の仕方まで理解が及ばなくなるので、その日のうちに情報や手順を改めて振り返るのが良い。

もう1つやるべきことは、1歩1歩の積み上げを大事にするということ。

例えばタンパク質の発現であれば、「シーケンスは間違いないか」「そのコロニーには目的の遺伝子が入っているか」「精製はできているか」など、確認して当たり前のチェックポイントがいくつもあり、それを完璧にこなすことで少なくとも事実を反映したデータが得られる。

自戒のために書いておくと、これを1段飛ばし、2段飛ばしでやると、どこに問題があったのか後から振り返ることができず、本来かかる以上の時間を無駄にすることになる。

必要な試行錯誤と、防げる試行錯誤があるので、それを肝に命じたい。

あとは、下記の記事にも書いたが、好奇心にドライブされて次の実験を考えるようにしたい。

博士課程に入ってから研究に対する心構えを変えた話イギリスに来てから研究スタイルを変えたというエッセイです。 もし興味があれば読み進めてみてください。 研究に対する心構えを変えた...

その分野のおきまりの実験の流れは、必ずしも何かを明らかにすることに結びつかない。

自分の知りたいことがわかる実験系を選択できるように、常に興味をもち、データをみては考える癖をつけたい。

ただ、今までで一番「研究そのものが楽しい」という感覚を味わえているのが嬉しい。

年齢を重ねるにつれ、「楽しい」「嬉しい」「好き」という感覚を持つことが難しくなっているようにも思うので、ポジティブな感情を大事にしていきたい。

家族

これだけ研究に時間がかけられているのは、ひとえに秋田で子育てをしてくれている奥さんと、可愛い可愛い娘のおかげである。

子育て中で手が離せないことや時差の都合で、1日10分くらいの電話にはなっているが、娘の様子などを伝えてくれているので、とても励まされている。

娘は満7ヶ月になり、つかまり立ちもできるようになったらしい。

秋田に行ったばかりの頃は寂しくてよく泣いていたようだが、ここが自分の新しい家と受け入れてくれたよう。

また引越しになってしまって申し訳ないが、休みの日には散歩に連れて行って、イギリスの巨大な幼児と対面させてみたい。

家計状況は財団からの支援のおかげで比較的安定しているので、なんとかこのまま減額や家賃引き上げに合わずに4年間を送りたい。

自分の内面

最初は環境の変化(主に食)に「日本にいればよかったかな」と思うこともあったが、諦めが付いてくると、これまで嫌だと思っていたものの数々が徐々に苦にならなくなった。

孤独感も特にないが、お風呂上がりにYoutubeをみて12時や1時になってしまうのは直さなければいけない。

アメリカ留学の経験から言えば、4ヶ月目くらいからきつくなるので、友人との電話の約束などもいれながら、うまく心のマネジメントをしていく必要がある。

twitterを見すぎると心が病むので(自分と人を比べたり、人の負の感情をもらってしまったり)、1日1回くらいにしておくのが無難。

やはり4年かけて研究できるというのが、心に大きな余裕をもたらしてくれていると思う。

もちろん論文はちょこちょこ出したいが、それだけの期間の中で挑戦ができるというのは、好奇心や独創性を試すのに向いている。

それでもまだ心のどこかに焦燥感はあるので、複数のプロジェクトを進める中で、まとまりそうなものがあれば先に1つ出してしまってもいいかもしれない。

最近何かのコラムで読んだが、「科学研究も仕事と割り切っていい」と書かれているのに心が救われた。

「研究成果を出すこと」=「自分の存在意義」になってしまうと精神的にきついので、仕事だからうまくいくことも行かないこともあるけど、打率をあげれるように善処しようという心構えで過ごすことが大事。

自分の性格上、研究そのものと心身のメンテの両方をし続けなければいけないので、どちらかに偏ることなくうまくバランスをとり続けたい。

年末に向かうにつれて実験時間が減ると予想されるので、11月はできるだけ進捗の貯金を作り、もし家族が来られれば穏やかに年末年始を迎えたい。