いま私は2020年10月の博士課程開始に向けて、ビザ申請や家探しなどの準備に奔走しています。
留学先はイギリスのケンブリッジ大学です。
シリーズ「大学院受験記」では、海外大学院進学を決めるまでの出来事をできる限り忠実に書き起こし、これから留学される方の参考にしていただくことを目的としています。
第1回では幼少期から高校生くらいまでを、
第2回では大学の学部時代の留学のエピソードをご紹介しました。


第3回では実際に研究室を訪問するところから、Offer Letterをもらうところまでを振り返ります。
研究室訪問
トップスクールと呼ばれる知名度の高い大学では競争が激しく、受験をしても合格をもらうことは非常に難しいです。
そのため、海外大学院を受験される方には、次のようにレベルに幅を持たせて10校くらい出願することをオススメしています。
挑戦校 2~3校
頑張れば受かりそうなところ 5~6校
滑り止め 2~3校
しかし、当時の私はそんな知識もなく、
「え、大学院出願って併願した方がいいの?」
くらいにしか捉えていなかったので、
「もし落ちたら国内の大学院に行くか、また次のチャンスに出願すればいいや」
と考えていました。
そして、まずは元から興味を持っていたケンブリッジのラボを訪問し、先生の人柄や研究環境などを見てくることに。
当時の指導教官が、ケンブリッジの先生(ポール先生)と少し面識があるとのことだったのでアポのメールを出していただいたのですが、待てど暮らせど返事が来ず(今思えば最初から自分で出せば良かった…)、ポール先生と深いつながりのある別の先生にお願いして紹介をしてもらうことができました。
2018年5月にアポをとり、6泊7日でいざイギリスへ。
ケンブリッジを見せてもらったのはそのうちの2日間で、残りは先輩にオックスフォードを案内していただいたり、ロンドンを探索(観光?)していました。
訪問の際には自分の卒業研究や修士研究の話をプレゼンし、なぜこのラボに来たいのか、ここで何をしたいのかということを伝えました。
また、ラボ内のセミナーにも参加させていただいて、そのラボで研究する方々の発表を聞かせていただきました。
その雰囲気がアクティブでかつ温かく、「もう絶対ここへ来る!」とすぐに気持ちが固まりました。
長く住むのであれば生活環境も大切です。
実際に訪れてみて、ケンブリッジの厳かな街並みもとても気に入り、そこで生活するイメージが持てたことも決意を固めた要因です。
もしこれから研究室訪問をする方へ何かアドバイスを送るのであれば、「綿密な準備をすること」をオススメします。
実は私はこの訪問の準備をしっかりしていきました。
具体的には、ポール先生が著者に入っている論文を過去13年分全て読み込み、そのラボの研究の変遷を自分なりにまとめました。
分野の中での位置付けなどはまだまだ分かっていない部分はありましたが、そのラボがどういうラボなのかということをよく理解していったことで、ポール先生をはじめとするラボの皆さんに「こいつのやりたいことは、少なくともミスマッチはしていない」という印象を与えることができたと思います。
研究室によっては財政的な事情などにより、取りたくても学生を取れないこともあると思いますが、もしチャンスがあれば必ず自分がその枠を取るという覚悟で準備していくことをオススメします。
出願
イギリスでは9月の末に、翌年10月入学のApplicationの受付が始まる大学が多いです。
私は5月に研究室訪問をして、9月にオープンになったらすぐ出願すると決めていたので、それまでの期間をエッセイの準備や推薦状の依頼に当てていました。
アメリカやイギリスの合否判定はローリング式(受け付けたものから合否を出していく方式)のため、締め切り間際に出すと空きが少なく難しくなると聞いていたので、オープンになって3日目に出しました。
そして、11月のある夜、英会話教室を終えて仙台駅前のエスカレーターを登っている時に何気なく開いたスマホに条件付き合格のメールがきているのを見つけ、思わず飛び上がりそうなほど嬉しかったのを覚えています。
珍しく、母や祖父母に電話をかけたほどです。
ここからは出願の際に準備したそれぞれの書類についてみていきます。
志望理由書・エッセイ
志望理由書とエッセイは聞かれる内容が毎年変わらないので事前にテーマは分かっていました。
一旦自分で書いてみて、それを友人3人にチェックしてもらい、コメントをもらいました。
それらを反映したものを英文校正に出して最終版としました。
推薦状
推薦状は当時の指導教官(教授)と、ポール先生と親交の深い先生(日本国内の教授)の二名からいただきました。
学会シーズンでお忙しい中、お二人とも時間をとって書いてくださり、さらには英文校正にまで出してから提出してくださいました。
私の出願ではこれらの推薦状が大きな役割を果たしたと思います。
IELTSのスコア
IELTSは「Oversll7.0かつ、Listening/Writing/Speakingが7.0以上」というのが条件でしたが、この時点ではOverall6.0くらいでした。
イギリスの大学院ではIELTSのスコアは入学の1ヶ月前くらいまでに出せばいいという形になっているため、スコアはあとで出そうと思って最初から「条件付き合格」を狙っていました。
ただ、最後の最後までスコアの取得に苦戦したので、早い段階からIELTSを受験し、スコアをとっておく事を心からオススメします。
どれほど苦労したかはこの記事に書いているのでよかったらどうぞ。

GPA
「学部の成績」と「修士のそれまでの成績」を提出しました。
学部のGPAは3.5、修士は3.6くらいだったので、ケンブリッジに出願する人の中では平均的か、やや下に位置する成績だと思います。
学部は教養科目の出来が悪く、専門科目はほぼオールAでした。
以前読んだアメリカ大学院留学に関する記事では「専門科目の成績が特に考慮される」と書かれていたので、もしかすると専門科目の成績が良かったことはプラスに働いたのかもしれません。
奨学金
イギリスの大学院ではアメリカと違ってラボから給料が支払われないことが一般的です。
そのため、「奨学金を獲得しているかどうか」が合否に関わるファクターとして大きく影響します。
私は孫正義育英財団から三年分の学費・生活費・研究費の支援をしていただけることになっていました。
イギリス大学院留学を検討されている方は、学費・生活費を超える貯金を作るか、奨学金を獲得しておくかのどちらかが必須だと思います。
ケンブリッジの場合の年間支出の目安は次の通りです。
学費: 450万円
生活費: 360万円
すーごい高いですね…
私のケースでは資金のチェックポイントが「出願時」「カレッジに入る時」「ビザを取る時」と3回もあり、それぞれ必要とされる書類が微妙に違っていたりしたので、よく準備をしておくことが必要です。
研究業績
出願時には「論文0, 学会発表2」という目も当てられないような状況でした。
しかし、研究のバックグラウンドはよくフィットしていたので、スキルとしては問題ないと捉えられていたと思います。
競争倍率の高い学科では論文の出版をしていないとスタートラインにも立てないということがあるので、できれば学部・修士のうちに1報出しておけると良いでしょう。
ここまでの書類を振り返ると、
・志望理由書
・推薦状
・奨学金
で差をつけられたことが合格に繋がった要因だと思います。
まとめ
・どこの国へ留学するにしても、事前に研究室訪問をしておくことは大切
・研究室訪問で印象を残せるよう準備をしておくべし
・合否判定は「志望理由書」「推薦状」「GPA」「奨学金」「研究業績」の合わせ技