統計検定2級を受けてきました。
統計検定とは
統計に関する知識や活用力を評価する全国統一試験
です。
自身の研究に数理解析などを積極的に取り入れていきたいと思っているため、その準備としてコロナでの自宅待機期間に趣味で受験しました。
この記事では受験を振り返り、これから統計検定に挑戦される方の参考にしていただくことを目的としています。
統計検定2級の合格率は40%前後とそれなりに難しいにも関わらず、ネットには不合格者の記事は非常に少ないので、この記事を通して「甘く見ていると落ちる」ということを理解していただきたいです。
Contents
統計検定2級の出題範囲
統計検定2級では大学基礎課程で習得すべきことが出題されます。
公式問題集の冒頭の記述によると
①現状について問題を発見し、その解決のために収集したデータを元に、
②仮説の構築と検証を行える統計力と、
③新知見獲得の契機を見出すという統計的問題解決力
を測ることを狙いとしているそうです。
具体的には以下の大項目・小項目に分かれます。
1. データソース
->1-1身近な統計
2. データの分布
->2-2データの分布の記述
3. 1変数データ
->3-1中心傾向の指標
->3-2散らばりなどの指標
->3-3中心と散らばりの活用
4. 2変数以上のデータ
->4-1散布図と創刊
->4-2カテゴリカルデータ
5. データの活用
->5-1短回帰と予測
->5-2時系列データの処理
6. 推測のためのデータ収集法
->6-1観察研究と実験研究
->6-2標本調査と無作為抽出
->6-3実験
7. 確率モデルの導入
->7-1確率
->7-2確率変数
->7-3確率分布
8. 推測
->8-1標本分布
->8-2推定
->8-3仮説検定
9. 線形モデル
->9-1回帰分析
->9-2実験計画の概念の理解
10. 活用
10-1統計ソフトウェアの活用
問題数は35問程度で正答率60%で合格です。
統計の学習歴
参考までに私の数学歴を記録しておきます。
・高校生の頃(約7年前)に数IIICまで学習
・大学基礎科目では数学を履修していない
・生物統計は専門科目で履修した
統計の専門教育は受けておらず、実験データを処理する際には他の論文に書いてあるような統計手法を慣例的に使っていました。
これじゃ全然ダメだなという自覚があったので、統計検定の挑戦は学習の良い機会になっています。
実際の試験結果
結果
結果は正答率55%で惜しくも不合格…
内訳は
・1変数2変数記述統計: 75%
・データ収集, 確率, 分布: 42%
・推定, 検定, 線形モデル: 55%
となっていました。
推定に苦手意識があったので、それ以外でカバーしたいと思っていましたが、確率やデータ収集のセクションで大失速していました。

統計検定には年に2回受験の機会がある「紙ベースで受けるテスト(PBT)」ともっと頻繁に開催されている「コンピューターで受けるテスト(CBT)」があります。
CBTでは問題を解き終えた後、アンケートに答えるとすぐに結果が見られます。
私はCBTで受験したのですが、地方の会場だったのは受験者は自分だけ。
退室前には係の人が結果を印刷して手渡しでくれるのですが、1人のそれも不合格の受験者のために、結果を印刷してきてもらうのが申し訳なくなりました。
受験者数の少ない会場は落ち着いて試験が受けられる反面、そういう気まずさもあります…
PBTとCBTで異なる点
PBTの過去問と、受験したCBTのテストではいくつか異なる点がありました。
①問題数
PBTでは34問あるのに対して、CBTでは32問です。
ただしCBTの31, 32問目は2つ選ぶものがあるので、実質的には同じ問題数になっています。
②回答方式
PBTでは全て塗りつぶし方式である一方、CBTでは最後の2問が数字を入力する方式になっています。
数字を入力するといっても計算結果などではなく、選択肢の番号をキーボードで入れるという形です。
それ以外の問題は選択肢にチェックを入れるというタイプです。
③計算量
PBTでは最終計算結果が求められるので計算量が多い一方、CBTでは計算量が少なく、ほとんどの問題で立式した状態の選択肢になっていました。
④ノート
CBTではラミネートした罫線紙と水性ペンが計算用に渡されました。
非常に計算しにくいです。
いっぱいになったら挙手をし、係りの人に新しい計算用紙(同じ形式のもの)をもらいます。
試験に向けての準備
次に試験に向けてやったことを整理します。
最初は統計検定に過去に合格した方の記事を読み、どう勉強していけば良いかを大まかに掴みました。
こんな記事ですね。
高校数学が赤点だらけだった僕が統計検定2級に1ヶ月半で合格した話
試験まで1ヶ月しかなかったので、
基礎理解: 統計Web
演習: 過去問
だけをやることにしました。
1ヶ月かけて行うつもりがなんだかんだ忙しくなってしまい、きちんと勉強時間が確保できたのが最後の1週間でした。
実質勉強時間は
5時間x7日=35時間
+10時間(前の3週にちょこちょこやっていた分)
合計45程度でした。
統計Web
統計Webは統計検定に必要な基礎情報が非常に分かりやすく解説されています。
難しい数式が出てくることもなく、直感的な理解がしやすいので、統計の教科書のように挫折する心配もありません。
ただ、分量が多いのでダレてしまいやすいかもしれません。
そのため知らない範囲だけを読んでいくという方法が効果的です。
推定や検定のように出題されやすい分野にも目を通しておきましょう。
あとは問題を解きながら参照していくという形で問題ありません。
私は統計Webを最初から順番に読んでいってしまって、かなり時間がかかったので、適度にショートカットするべきだったと思います。
過去問
過去問は2017年から2019年の問題が収録されている物を使用しました。
PBTでは6月と11月に試験があるため、3年分の過去問に6回分が収録されています。
これを4回分解きました。
本来ならば全体を何週もするべきであると思います。
特に統計学は教科書を読んで原理を理解できても、問題を解くのに使えないことが多くあります。
実際に演習をする中で使えるようになってくる物なので、過去問演習は念入りにやっておくべきでした。
大学の期末試験のようにパターン化されている訳でもないので、1題1題よく考えながら解いていくことが必要です。
アマゾンのレビューを見ると「解説が分かりにくい」という声が多かったですが、使ってみると割としっかり解説も書いてあり、思っていたよりは満足できました。
理解できない問題は次に紹介するような動画で理解していました。
Youtubeの過去問解説
ちょうど私が勉強を開始した頃から、統計検定の過去問を解説した動画がいくつかYoutubeに上がるようになりました。
Kawaguchi Yuyaさんという方のチャンネルで数年分の全問解説をしていたもので勉強させてもらいました。
例えばこんな動画があります。
ホワイトボードに問題を投影しているのでやや見にくいのですが、内容は非常に分かりやすくてオススメです。
やっておくべき勉強
振り返ってみて「もっとこうしておけば良かったな」と思う箇所についても記録しておきます。
それぞれの分布の本質的理解
とにかく問題が解ければいいという付け焼き刃的な勉強をしてしまったので、自分がやったことのある問題パターンで無ければ解けませんでした。
統計検定は問題の焼き直しがあまり頻繁ではないので、もっと時間をかけて本質的な理解をしておく必要がありました。
中でも適合性の検定、平均の差の検定、等分散性の検定などは使う分布も異なるので、その意味をよく理解しておかなければなりません。
そのためにも
「入門 統計学 −検定から多変量解析・実験計画法まで−」
のような「平易に理解できる、統計Webよりもう少し詳しい教科書」を使って基礎を固めるべきだったと思います。
過去問を繰り返し解く
あとはやはり演習不足ですね。
どのような資格試験にも共通しますが、
実際に手を動かして解けるか?
制限時間内に解けるか?
といった点を確認するために過去問の繰り返しは必須です。
統計検定では「基礎の理解」と「それを使って社会にある問題に適応する(要は試験の問題が解ける)」の間には大きなギャップがあります。
それを埋めるためには過去問に慣れて、思考のプロセスを自力で辿れるようにする必要があると痛感しました。
次回受験する際には6回分を2周ずつはしておこうと思います。
まとめ
統計検定2級はそれほどやさしくありません。
統計の本質的な部分をよく理解し、実社会の問題に統計学を活かせるレベルになる必要があります。
今回の失敗談が誰かの参考になると嬉しいです。
私自身ももう一度トライして、合格の報告ができるように頑張ります。
本サイトでは研究生活のことなどについても記事を書いています。合わせて参考にしてみてください。


