大学院生活

ケンブリッジ大学の博士課程を支える5つの制度

ケンブリッジ大生になって早くも3週間が経ちました。

大学院生は優秀な方々が多いのですが、その優秀さをさらに引き上げるような文化があるのもこの大学のいいところです。

文化を真似するのは難しいですが、制度を取り入れることは出来ます。

学科の仕組みが少しずつ分かってくるにつれ、「うわ、この制度すごくいいじゃん」というものを沢山発見しました。

ここでご紹介するものは、日本の大学でも、お金をかけなくても実現できるものばかりなので参考にしてみてください。

異なる立場の人からアドバイスを受けられる

ケンブリッジ大学の生化学科では、Postgraduate Thesis Panel (通称PTP)と呼ばれるアドバイザーがつきます。

PTPは「研究室の指導教官」「研究科の別の教授数人」から成り、折に触れて研究内容を報告したり、指導教員と上手くやっているかなどの相談に乗ってもらうことを目的としています。

この制度は東北大学でもあり、「指導教官」+「副指導教官」の2名をアドバイザーに選ぶようになっていました。

東北大学の方は自分で副指導教官を選べましたが、ケンブリッジでは自動で割り当てられます。

ちなみに私の副指導教官はナトリウムチャネルなどを研究されている構造生物学の方です。

研究テーマはあまり近くありませんが、いい刺激を受けられるような人選がされているのだと思います。

特筆すべきは、副指導教官とのミーティングを絶対にしなければならないという点です。

と言っても回数は少なく、1年目は2回、2年目以降は年に1回です。

このように、分野の違う人にもわかりやすく伝える練習をすることで、自分の研究の魅力は何か、どんな風に役に立つのかを考えることが出来ます。

PTPとは違うのですが、所属するカレッジの中でもチューターと呼ばれる担当者がつきます。

チューターには主に私生活の困りごとなどを相談するよう期待されています。

私の場合は指導教官とカレッジが同じなので、チューターも指導教官が兼任するようアサインされていたのですが、彼の方から「いろんな人に独立で意見をもらえた方がいいから、チューター変更の申請しよか」と言われて、チューターはカレッジスタッフの女性に代わりました。

まだこれといって恩恵は受けていないですが、この先困ったことがあれば相談しながら長い博士課程を乗り切ろうと思います。

学生同士で研究の進捗を報告し合う

学生同士の研究報告会も行われており、これはPeer Research Group (PRG)と呼ばれています。

マスターもドクターも関係なく、大学院生が14人で1ファミリーになって、2週間に1回報告会をしています。

やはり学年を超えてワイワイやれるのが面白いところで、上級生が仕切りながら順番を決めたり、質疑応答をしたりしています。

14人もいるので自分が発表する回は2ヶ月に1回くらいですが、出席が義務付けられているのでちゃんと出欠確認がされます。

研究の苦労の足跡が見えるため、”すごい博論”の裏側ではこんなに試行錯誤があったんだなと分かって少し励まされるのも、この集まりのいいところです。

日本でもこの制度を取り入れたらもっと自主性が高まりそうですね。

充実した共通機器

ラボで研究を始めて驚いたのは自前の機器の少なさです。

植物のラボなのに顕微鏡は一台もない、タンパク質精製をやるのにActaもないというのには大変驚きました。

かといって、それらの機器を使っていないというわけではなく、共通機器を使えば事足りてしまうのです。

生化学科には特殊なスキルを専門に扱うスタッフチームがあります。

例えば「結晶構造解析のチーム」「cryo電子顕微鏡のチーム」「DNAシーケンスを決める専門のチーム」「MSを専門に測定するチーム」などです。

測定したいサンプルがあれば彼らに連絡をとり、指示に従って準備を進めれば測定してくれます。

全部自分でやらなくてもいいので楽なのですが、その技術の背景を勉強せずとも出来てしまうので少し味気ないところもあります。

しかし、この分業制のおかげで高い生産性を叩き出しているラボが多いのも事実です。

小さなところでは「試薬発注」や「ガラス器具の洗浄」さえも担当者がやってくれるので、然るべきタスクに時間を使えて、個人的にはとてもありがたい制度に感じます。

いつでも指導教員と連絡が取れる

ケンブリッジの指導制度と言えばスーバービジョンが有名です。

教授との1対1の議論を通して学びを深めていくというイメージを持った方が多いと思います。

これは半分正解で半分は事実と異なります。

コロナでリモートが推奨されたこともあり、ケンブリッジではマイクロソフトチームズがコミュニケーションの核になっています。

チャット形式でのやり取りやビデオ通話を駆使して、あくまでも現代的にスーパービジョンをしています。

おかげで指導教員とかなり密にコミュニケーションを取りながら研究を進められています。

日本にいた頃は、先生は教授室から滅多に出てこないので、言葉を交わす日の方が少なかったですが、ケンブリッジでは1日何十往復もやり取りすることができています。

ほぼ毎日開催されるセミナー

大きな大学あるあるですが、セミナーが毎日開催されるのも嬉しいポイントです。

研究分野も多岐に渡り、遺伝子から生態系まで様々なトピックに触れられるので、科学的な興味を広げるには最高の環境です。

また、メーリングリストに追加してもらえば他の学科のセミナー情報もゲットできるので、アンテナをさらに高く伸ばすことも可能です。

厳選されたトピックを1時間でぎゅっと理解できるセミナーは、忙しい人にこそおすすめです。

先生の立場からしても、様々な研究者にセミナーに来てもらって、つながりを作ることができるので、ぜひ日本の大学でもセミナーイベントが増えてほしいなと思います。