大学院生活

【大学院生の奨学金獲得】採択率を上げる志望理由書の書き方

理系大学院生は学振をはじめ、様々な奨学金・フェローシップに出願する機会があります。

様々な志望理由書を比較すると分かるのですが、似たような研究をやっている候補者でも、志望理由書の書き方は様々で、全く受ける印象も異なります。

私は幸いにも、学部から博士課程にかけて複数の奨学金/研究費を獲得することができ、採択率も比較的良い結果を残せています。

この記事では、私が志望理由書を書く時に気をつけているポイントをご紹介します。

自分を分かりやすいキーワードでカテゴライズする

モヤっとする申請書の多くには、ある共通の特徴があります。

それは、

「後半まで読まなければその人が何をしたいのかがよく分からない」

ということです。

それを回避するためには、研究の核となるキーワードを早い段階で定義付けることが有効です。

私の場合では、志望理由書の冒頭の一文を

「植物細胞壁は世界のエネルギー問題を解決する。」

といった、賛否両論ありそうな文章から始めることもあります。

それがあるだけで、「あ、この人は植物細胞壁で何かしようとしているんだな」とある種のイメージを植え付けることができます。

これは文章の結論を冒頭で述べる技術と似ており、その後の段落では

  • その研究に関心を持ったきっかけ
  • 自分がやってきたこと
  • これから中短期的にやること
  • 懸念材料
  • 奨学金の必要性
  • 将来の展望
  • 結び

のような構成に従うだけで、かなり説得力があり、分かりやすい文章になると思います。

注意が必要なのは、専門用語を多く出すと、それらのインパクトが薄れることです。

言い換えられるものはなるべく平易な言葉で言い換え、「これ!」というキーワードだけをいくつか散りばめるようにしましょう。

私の申請書では「植物細胞壁」「多糖合成/分解酵素」「バイオマスエネルギー」などの用語がキーワードになっています。

なぜそれをやるのかをストーリーとして語る

素晴らしい研究計画があっても、「なぜそれをあなたがやる必要があるのか?」という必然性がなければ「指導教員が考えたんでしょ」となってしまい、あまり説得力が生まれません。

読み手を納得させ、「この学生は高いモチベーションがある」と思ってもらうためには、自分がその研究に興味を持ったきっかけや達成したいビジョンをストーリーとして展開する必要があります。

実情としては「研究室に配属されて、研究をしていくうちに突き詰めたくなった」ということも多いかもしれませんが、ほんの些細なことでもいいので、その研究室に心惹かれた理由を思い出してみてください。

嘘はダメですが、「今思えばあれがきっかけだったかな〜」と言うものを軸に書くのは問題ないと思います。

 

私の動機の段落は多くの場合、下記のように展開しています。

(*実際はもう少し固く書いています)

  • 祖父母が乳牛の牧場を経営しており、小さい頃から生き物に強い関心があった
  • 熱帯魚、カブトムシ、犬など様々な生き物の飼育に熱中した
  • 大学時代に受けた講義で「細胞壁分解酵素ってかっこいい!」と電撃を受け、一気に細胞壁研究の道へ
  • 学部時代に留学し、優れた研究環境・教育環境を目の当たりにし、海外で研究をしたいと思うようになる

 

このように、原体験に基づく動機が汲みとれる構成になっているのが、説得力を上げる上では重要です。

と言うのも、志望理由書は「オレってすごいだろ」をアピールするための文章ではなく、「この人を応援したい」と思ってもらうための文章だからです。

読み手に自分と同じ目線に立ってもらい、気持ちを共有できるような論理構成になっているかどうかをチェックしましょう。

私は推敲の段階では一文一文に対して「なぜ?」と自分で問いかけ、内容・文章のリズム・共感が得られるかどうかなんかをチェックしています。

研究内容は読み手に合わせた詳しさを心がける

研究内容はもっとも読み手を置いてけぼりにしやすいパートです。

そのため、誰がその書類を審査するのかをよく調べましょう。

  • 同分野の研究者であればもっとも専門的に、
  • 省庁の役人であれば程よい専門性や、還元できる社会の利益を盛り込んで、
  • 財団の事務の方々であれば分かりやすい例えを交えて、

説明するのが良いでしょう。

ケンブリッジに来て知ったのですが、私のラボでは大型の研究グラントでも、事前に審査候補者や過去の審査員リストなどを調べて、書き方を変えています。

ラボの生産性を高める方法については別の記事に詳しいので、ぜひ合わせて参考にしてみてください。

長期間に渡ってアクティビティの高いラボを運営するには2020年も残すところあと数日となりました。 皆さんにとってどんな年になりましたか? 私にとっては激動の一年でした。 ...

 

また、他の出願者がどのような分野であるかということも、内容の具体性には大きく関わってきます。

自然科学全般なのか、植物生理学分野だけなのかでは書くべき内容が全く異なるので、他の出願者の書いてきそうな内容を想定し、それらと差のつく深さを考えましょう。

展望は野心的に

将来については書いても書かなくても良いと思いますが、実現したい社会像や希望するキャリアなどがあると、卒業後のイメージをしてもらいやすいと思います。

研究者は将来の見通しが悪いので、今望む通りにはならない可能性も十分考えられますが、「現時点ではこんなことをしたいと思っている」ということを、堂々と書きましょう。

特に、ポテンシャル評価で採否が分かれるような場面では、将来の目標が高い方がポジティブな印象を与えるのではないかと思っています。

抽象と具体のバランスを意識する

文章の展開の中では、抽象的な概念から具体的な説明への移行を繰り返し行うことで、内容に厚みを持たせることができます。

この説明自体が概念的で分かりにくいですよね。

ということでここでも具体例を見ながらを説明します。

 

まず、情報には階層があることはみなさん理解されていると思います。

自然科学>植物科学>植物細胞壁分野>細胞壁酵素

のようなイメージです。

このうち、大きな階層の話題から入り、徐々に小さな階層に論点を移行していくことを意識してみてください

志望理由書の中で唐突に「細胞壁合成酵素の重要性」を説かれても腑に落ちない一方で、「植物科学は食糧生産に役立ち、その中でも細胞壁に多くの多糖が含まれているから、細胞壁合成酵素のメカニズムを理解することは重要だ」と展開していく方が、「なるほど」と思ってもらえる場合が多いと思います。

議論が同じ階層のものに終始していると深みが出ませんし、階層を意識せずに使っていると用語に混乱が生じるので、適切な関係を意識して説明するようにしましょう。

自分がその奨学金とどうフィットするかを説明する

非常に重要な点なのですが、各奨学金団体はそれぞれに採用ポリシーを設けています。

とにかく学業に秀でた人が欲しい場合もあれば、海外に日本文化を発信できる人を求めている場合もあります。

そのようなニーズに対して、なぜ自分が適任なのかをできるだけ詳しく説明するようにします。

ここでも原体験を盛り込むことや、抽象から具体への移行などは役に立つと思います。

想像力を働かせて、採用者がどんな人を欲しがっているのかを考えると共に、過去の合格者・負合格者のサイトなどを念入りに読み込んで戦略を練りましょう。

ちなみに、私は本質的には同じ内容であっても、提出先ごとに大幅に書き方を変えて書類を作成しています。

どこを面接で聞かれても深掘りできるように余白を残す

多くの場合は書類審査通過後に、面接審査が待っています。

その際には志望理由書を基礎情報として質問がなされるため、志望理由書+αの情報を出せるように準備しておくことが求められます。

実際に私が受けた面接でも、質問の8, 9割は、志望理由書に関連した内容でした。

面接前に改めて書類を見返し、内容を深めることに加えて、書類を各段階でも「この内容について、こういう質問がきそうだな」と想定しながら準備するようにしましょう。

大事なことは全て書類に入れつつも、補強に使えそうな情報(主に具体例)は余白として残しておくのがいいと思います。

まとめ

ここでご紹介したコツはあくまでも私が普段やっているもので、これ以外にも役に立つノウハウはまだまだあると思います。

それでも、上記の項目を守るだけで、多くの人にとって再現可能な質の高い志望理由書がかけるのではないかと自負しています。

奨学金の取得は時間も労力もとてもかかる作業なので大変ですが、ぜひコツを掴んでいい書類を準備してみてください。

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