英語学習

書籍紹介|「日本人のための英語学習法-シンプルで効果的な70のコツ-」里中哲彦

「日本人のための英語学習法-シンプルで効果的な70のコツ-」は翻訳家また塾講師として活躍する里中哲彦さんの書かれた一般書です。

書店でもよく売れており、英語学習に関心のある方なら一度はその表紙を目にしたことがあるでしょう。

新書なので難しく書かれていると思いがちですが、内容は項目別でとても読みやすい一冊です。

本記事ではこちらの書籍について、概要・構成・印象に残ったポイントをご紹介します。

「日本人のための英語学習法」の概要

この本では、様々な日本人の学習過程を観察してきた著者の経験と、専門研究のデータを引き合いに出し、「日本人が英語の4技能をバランスよく身につけるにはどうすれば良いか」が70のポイントにまとめられています。

よくある英語学習本のような単なる精神論ではなく、日頃の学習でどのようなことに気をつければ良いかがステップバイステップで書かれているのでとても具体的です。

また、一気に70の項目をやらなくても、自分にあった部分だけ取り入れられるようになっているのが魅力的です。気になった項目だけ読んでも参考になります。

英語学習者が直面することが多い疑問に答える形になっているので、この本を読むことで「そうやって進めれば良いんだ」というヒントが得られるでしょう。

一方で、かなり基礎的なことが多いので、ある程度の英語力がある人や、どうやって語学習得すれば良いかのイメージができている人にとっては物足りない点もあると思います。

なので、この本は次のような人にオススメできます。

・社会人で英語を学び直したい人

・海外留学の準備をしている人

・言語の習得過程に興味のある人

・自分の勉強法が確立していない人

「日本人のための英語学習法」の構成

「日本人のための英語学習法」は目的ごとに章立てがされており、全6章の構成になっています。

構成を見るだけでも70のポイントが分かると思うので、ぜひ参考にしてみてください。

第1章 「自前の英語」を身につけよう -英語に対する「心がまえ」

01: あなたが「身に付けたい英語」とは 明確な目標を持つ

02: 「目標」と学習法 学習を始める前に考えるべきこと

03: 英語をどう捉えたら良いのか 学ぶこと自体を目的にしない

04: どんな英語を身につけたら良いのか(1) 「自前の英語」を身につけよう

05: どんな英語を身につけたら良いのか(2) 関心のある分野に絞って学ぶ

06: どこから手をつけたら良いのか 「知識」がある分野から始める

07: 究極のコミュニケーション英語とは 「自分にしか語れないもの」を語れ

08: 英語の習得は簡単? 英語と日本語との「言語的距離」

09: 「英語習得」にかかる時間 基本の習得には3000時間必要

10: 英語学習とどう向き合ったら良いのか 「トレーニング」することで身につく

11: 学習の質を向上させるには 「質」と「量」の関係は相互依存

12: どうすれば学習を続けられるのか モチベーションを維持しよう

第2章 できる人がやっていること -「音読」と「読み書き」

13: 「英語で考えろ」というけれど 音読について①

14: 英語が身につく学習法 音読について②

15: 音読トレーニング法 音読について③

16: 「シャドウイング」とは 音のデータベースを増やす

17: どんな辞書を使ったら良いか 「英和」「和英」「英英」を選ぶポイント

18: モチベーションが低下したら 「エッセイ」や「通俗小説」を読んでみよう

19: 「多読」の習慣をつけるには 「多読の3原則」を守ろう

20: お勧めの本は? “勘どころ”は多く読まないと身につかない

21: どうやって英文を作るのか 「英借文」をやってみよう

22: 英文で日記を書いてみる 4行日記を書こう

第3章 コミュニケーション英語のために -「話す」と「聞く」のトレーニング

23: 「日本人英語」でかまわない? 「つうじる英語」であればかまわない

24: 難敵は「内気さ」 恥を掻くことが上達への近道

25: 「沈黙は金なり」? 日本人の美徳は全く理解されない

26: 単語が出てこない! 日本語をそのまま置き換えてもダメ

27: 私たちに語れること 日本について説明してみよう

28: 伝わる「発音」 聞いて分かれば、カナ発音でもOK

29: 日本人に共通する発音の間違い 苦手な音をまずは把握しよう

30: 英語の音は変化する? 韻律に着目してトレーニングを

31: シャワーのように英語を浴びる? 時間のムダです

32: 「リスニング力」を伸ばすには 「精聴」と「音読」を繰り返す

33: 「洋画」は英語学習に役立つか いろいろと問題のある教材

第4章: 話すために必要なこと -「語彙」と「文法」を身につけよう

34: 基本の3000語すら覚えられない! コア・ミーニングを掴むのが大切

35: 目にした単語は全て覚える? 自分に必要な単語をしっかり習得しよう

36: どうやって語彙を増やすか 4つのコツで「使いたい単語」を覚える

37: 単語の効率的な覚え方 大まかに「語源」を知る

38: 「接頭辞」と「接尾辞」 基本だけ押さえておこう

39: 「文法」は必要か 避けて通ることはできない

40: 何のための文法化 「文法のための文法」ではダメ

41: 文法は徹底的にやったほうがいい? 英語は使いながら覚える

42: 先生も頭を抱える文法問題 瑣末なことを問うても意味がない

43: どんな文法書がいいのか 自分のレヴェルに合ったものを使おう

第5章 文法の極意 -「勘どころ」へのアプローチ

44: 「語順」通りに意味を撮るには やはり「文法」が大事

45: 「冠詞」の考え方 ちょっと違えば、意味が変わる

46: 「数」に対する意識の違い 日本語と全く違う

47: 「可算名詞」と「不可算名詞」 使い分けるために知っておくべきこと

48: 「私たちは…」をどう言う? 「人は誰でも」の”you”

49: 「未来のことを語る表現」とは “will”と”be going to ”を使い分ける

50: 使いこなしたい「進行形」 受ける印象がガラリと変わる

51: “would”と”could”の正体 丁寧な表現をマスターする

52: 難敵「前置詞」に挑む コア・イメージを掴む

53: 否定疑問文で聞かれた場合 “Yes”か”No”か

54: 「行く」と「来る」の認識のずれ 日本人が勘違いしやすい”go”と”come”

55: 「関係詞」の正体 日本語にはないもの

56: “excited”か”exciting”か 感情を表す分詞形容詞

第6章: 社交する英語-「英語のマナー」と「日本文化」

57: 排他性のある表現 何気なく使わないように

58: 「紹介」をする? 「名前」も必ず添える

59: 「オウム返し」が得意な日本人 英語では冷たい印象に?

60: 会話の障害物になる「相づち」 英語ではほどほどに

61: 「感謝」の度合い 状況によって表現を変えよう

62: 英米人はいつもストレートに言う? 英語にも婉曲表現はある

63: 日本人が誤解している「どうぞ」 「どうぞ」=”please”ではない

64: 「悲しい」の意味するところ 断るときは、はっきりと

65: 英語にも「敬語」はあるの? 日本語とのマナーの違い

66: いつも”Can I … ”でいい? 丁寧さのレヴェルに合わせて表現を帰る

67: 丁寧さの度合いが違う「依頼表現」 相手との関係を考えて使い分ける

68: 「知ってる?」をどう表す? “know”を日本語の感覚で使わない

69: 「カタカナ語」は通じるか 英語とはぜんぜん違う

70: 贈り物が好きな日本人 贈答意識の違い

印象に残ったポイント

場面に応じた表現の変え方が参考になる

ポイント61, 62では表現に緩急をつけようといった話が書かれています

日本語で「感謝」を表す場合でも、ちょっとしたお礼もあれば、心からの感謝を表現したいときがあり、それぞれ使う表現は異なります。

その違いが英語でもあることが分かると表現の幅が広がり、よりmatureな印象を与えることができるようになります。

それでは感謝の例を見てみましょう。上から下に行くにつれてカジュアルになっていきます。

I really appreciate what you done.

That’s very kind of you.

Thank you very much.

Thank you.

Thanks.

また、婉曲表現の小ネタにも面白いものがありました。

日本語でも天皇などの死のことを「崩御」と表現するように、直接的な表現を避ける場合もあります。

これは英語でも同様で、死ぬを「pass away」で表したり、妊娠しているを「be expecting」で表します。

今でこそ「pregnant」はテレビドラマでも普通に使われますが、一昔前は放送禁止用語だったというのは驚きです。

日本と海外の文化の違いがわかる

単なる英語学習法にとどまらず、この本を読むことで日本人とネイティブの意識の違いについても理解が深まります

例えば64項目では「難しいといって断ると、難しいが可能という期待を与えてしまうことがある」、70項目目では「日本人ほど気軽に贈り物の交換をしない文化もあるので、何かを贈ることでうんざりされることもある」といった事例が紹介されています。

後者の例ではジャーナリストの千葉敦子さんは次のように語っています。

外国人と付き合う場合には、まず贈り物をしないことを鉄則としたらいいと思います。

先進国の人たちは、家族や非常に親しい友人以外からの贈り物をもらう習慣がありません。

欲しいものは自分のお金で買いたいので、他人から物をもらって嬉しいとは思わないのです。

主語を「先進国の人たちは」とするのはあまりに一般化しすぎているとは思いますが、贈り物をもらって面倒くさいと思う人がいることが知っておいて損はないと思います。

書かれていることは必ずしも万人にとっての最適解ではない

実用書という性質上、「これが正しい学習法」という主張をするのは当然だと思います。

しかし、書かれている内容を全て鵜呑みにする必要はないかなと感じました。

本書で書かれているのは「英語学習者に最大公約数的に機能する勉強法」と捉えるくらいで良いでしょう。

というのも「その勉強法はしてないけど英語を使えるようになったからな〜」と思うポイントも多々あったからです。

例えば辞書で「英和」「和英」「英英」をどう組み合わせて使うかという項目があるのですが、私はほとんど辞書を引いたことがありません。

今の時代、単語の意味が知りたければオンライン辞書を引いて例文まで読めてしまうので、辞書を引くという行為はほとんどなくなっています(オンライン辞書も広義には英和ですが)。

他にも「英語で日記を書いてみよう」という項目があるのですが、個人的にはこれも意味のある学習なのかは疑問です。

英作文をする習慣は身に付くかもしれませんが、もし英作文のトレーニングをするのであれば、大学受験レベルの問題(使うべき構文があって、それを正しく使えているかを評価する問題)から始めるくらいでいいかなと思いました。

IELTSの勉強法などについては下記の記事で詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

IELTS勉強法まとめこの記事ではサイト内にバラバラになっている、IELTS対策用の記事を用途に応じて分け、読者の方が必要な記事にすぐにたどり着けることを目的...

まとめ

「日本人のための英語学習法-シンプルで効果的な70のコツ-」は英語学習の大まかな指針が得られる実用書です。

考え方の部分から、すぐに使える表現まで幅広いトピックをカバーしており、様々な学習段階の人に役立つでしょう。

全ての項目を鵜呑みにするとかえって空回りしてしまうことはあるかもしれませんが、自分に合いそうな部分を日毎の学習に取り入れることができれば強い武器になると感じました。

興味のある方はぜひ読んでみてください。