新たに研究室に配属された方や、研究テーマが変わった方は、その研究領域のことを理解するために、体系的に論文を読む必要があります。
最初に重要な論文をまとめて読んでおくことで先行研究が整理できますし、自分の研究の意義をどこにおくかを考えることができるようになります。
しかし、授業などで個々の論文の読み方は教えてくれても、「自分の研究に必要な先行研究をまとめて読むこと」を学ぶ機会はほとんどありません。
私自身、最初はその点ですごく苦労したのですが、いくつかのポイントを意識するようになってからは、重要な論文をそこまで抜け漏れなく整理できるようになりました。
この記事では研究を始めたばかりの方へ向けて、関連論文を体系的に整理する方法をご紹介します。
Contents
研究を始めた直後に論文リストを作る
まずはじめに、絶対にやってはいけない読み方が「気が向いた時に論文を探して、出てきたものから読んでみる」という方法です。
実際にこれは私が学部四年生の時にやってしまっていた方法です。
この読み方をしてしまうと、読むべき論文があとどのくらいあるのか分からないという不透明感や、今読んでいる論文がどういう位置付けのものなのかが分からないという不安感があり、非常に非効率になります。
それに対して、オススメの方法は、研究を始めたタイミングで「読むべき論文リスト」を作ることです。
自分の研究と密接に関連するであろう論文を30~100報選び、それを最初に全てダウンロードしてしまい、読む順番や、いつ読むかまで決めてしまいます。
そこまでやると、見通しが良くなりますし、あとは読むだけなのでとてもすっきりと作業に取りかかることができます。
ちなみに、ダウンロードした論文は全てメンデレーに投げ込み、一括管理しています。
メンデレーを活用すると、ワードファイルで卒論などを書く際にリファレンスをいれてくれるので、もしまだ使ってなければ下記の記事を参考にして入れておきましょう。
https://kirakunurse.com/mendeley/
文献は「核となる論文」と「派生論文」の二段構造
ここからは具体的な論文の選び方をご紹介します。
Google Scholarなどでキーワード検索しても、必ずしも引用する可能性のある論文ばかりではありません(有名なキーワードならなおさら)。
なので、最初は引用をベースとした論文検索をしていきます。
具体的には、自分の研究と密接に関係する論文(ここでは「核となる論文」と呼ぶ)と、その論文の土台となっている論文(ここでは「派生論文」と呼ぶ)の二段構造で文献を集めるようにします。
当然、核となる論文は特にじっくり読み込み、その背景知識を整理するために派生論文を読みます。
これらを押さえるだけでも、引用すべき論文の80%程度を網羅できることも多いです(ただしその精度は核となる論文と自分の研究の関連度合いに依ります)。
まずは「核となる論文」を3本程度紹介してもらう
まずは核となる論文の選び方を紹介します。
これはズバリ「指導教員に聞く」に尽きます。
なんだそんなことかよ…と思うかもしれませんが、それが最も確実なやり方だと思います。
聞き方としては「自分の研究テーマと深く関係する論文を2,3教えてください」といえば良いでしょう。
今後もその論文に書かれた方法論や現象をなんども確認することになると思うので、核となる論文は細かな点が理解できるまで読み込みましょう。
余談になりますが、論文を読んでいて分からないポイントは、基礎知識不足の他に、実験方法やその分野特有の表記法などに原因がある場合も多いので、理解できなければ先生や先輩に聞いてみると、意外とすんなり解決することもあります。
その引用元を「派生論文」とする
次に派生論文の探し方です。
これは、核となる論文が引用している論文を基本にします。
引用している論文は当然、論文のReferenceセクションに掲載されています。
核となる論文を読んでいく中で、派生論文がどのように引用されているかを見ながら、読んだ方が良さそうなものをリストに追加します。
できれば全ての引用元を読めると良いのですが、数が多いので絞り込む必要があります。
その分野の知識として当たり前に定着しているものを説明する引用などは、読む優先順位を下げても良いでしょう(引用しなくてもいいと言っている訳ではないのでご注意を)。
私の場合は、核となる論文1報あたり、派生論文が20~30くらい出てくる場合が多いです。
もちろん重複も出てくるので、核となる論文が増えれば増えるほど、一本あたりから抽出される派生論文は少なくなるでしょう。
1,2ヵ月で読み切るスケジュールを立てる
論文が出揃ったら、抽出した論文を重要度の順に並べます。
この際の重要度は関連性を直感で見積もって問題ありません。
次に、集めた論文を重要なものから順に読むように、スケジューリングします。
私の場合は日中に実験をして、夜に1報読むケースが多いので、あまり無理せず1日1報のペースで計画しています。
この際に、あまりに論文数が多いと途中で挫折するので、研究を始めたてのうちは30報くらいのリストにまで絞り込むと良いでしょう。
大学院生くらいであれば50~100報くらいのリストでも問題ないと思います。
あとは読み切る期間をある程度短めに設定しておくことで、息切れを防げるようになります。
私は大抵は1ヵ月で、長くとも2ヵ月で関連研究を読み、実験計画や論文化のイメージを早い段階で持てるようにしています。
論文のポイントを箇条書きでメモする
ここからは「読んだ論文の情報をどのようにまとめるか?」についてです。
様々なフォーマットを試しました、現時点ではMacの「メモ」ソフトで管理しています。
メモの一番上の行に「マンナン関連」のようなタイトルを書いておき、そのカテゴリに入る論文の情報を順次足しています。
メモソフトを使うメリットは、文字検索ができることと、iPhoneやiPadと同期するので、どの端末からでも見直せるという点です。
ただ、使いやすければ紙のノートでも、テキストエディターでもなんでもいいと思います。
メモの取り方にはコツがあります。
論文の内容を細かな点まで全てまとめると膨大な量になりますし、そこまで覚えている必要もない場合もあります。
そこでオススメなのが、論文のポイントを2~3文で要約することです。
特に自分が論文を書く時のことをイメージし、どういう文脈で引用するかを考えながら要約できるといいでしょう。
私は重要な箇所を箇条書きでメモしたあと、自分なりの要約を日本語で書いています。
Google Scholarを活用し、新たに出てくる論文をフォローする
さて、ここまでできていればあなたの研究に関連する先行研究の大部分は押さえれていることでしょう。
最後に注意すべきなのが、論文は常に新しく出版されるという点です。
それをカバーするために、Google Scholarの新着論文をお知らせしてくれる機能を活用しましょう。
これは特定のキーワードを登録しておくと、それを含んだ論文の一覧を定期的に送ってくれるというものです。
キーワードの組み合わせもできるので、自分が読む必要のある論文が上がってくるように登録しておきましょう。
私はこの通知メールを受け取ると、タイトルだけをざっと見ていき、読む必要がありそうなものがあれば、ダウンロードしてリストに加えています。
キーワード登録の方法などは下記の記事が参考になります。
https://ocoshite.me/how-to-use-goole-alerts
まとめ
先行研究を整理する際には最初にリスト化・ダウンロード・メンデレーへの登録を済ませておくと、その後の作業が非常に楽になります。
また、核となる論文と派生論文を最初にピックアップしておけば、抜け漏れもかなり少なく読めるようになるので、論文を書く際に「重要な論文が引用されていません」という指摘を受ける可能性が低くなります。
ぜひ読むべき論文を早めに把握し、いいスタートが切れるように準備しましょう。