大学院生活

【研究論】ハイインパクトな研究をするためにはセンターピンを意識する

2月は新しいプロジェクトのサーベイのために、論文を読む時間が増えました。

また、ここ数ヶ月の進捗報告セミナーもあったので、溜まったデータを整理して、研究の展開を考える時間がよく取れたおかげで、どっと仕事が片つきました。

少し時間ができたので、研究に対する考え方のエッセイを書いてみます。

私の所属するグループではいわゆる銅鉄研究は認められず、全員が新しい領域を斬り開くためのチャレンジをしています。

しかし、それは不確実性が高いのも事実です。

それではどのようにして、課題設定をし、それに取り組んでいるのでしょうか。

この記事では、「ハイインパクトな研究を行うために必須の問題設定」についてご紹介します。

研究は7並べ

私の知り合いの研究者が「研究は七並べだ」と言っていました。

これは言い得て妙だと感じます。

「巨人の肩に立つ」という表現とも近いのですが、現時点の私たちの前に横たわる問題は、過去の研究者の研究成果に立脚しています。

つまり、カード(研究成果)はめくられたカードの隣にしか出すことができないため、いかに重要な課題であっても、技術的に検証できないものも多く存在するということです。

そのため、「検証可能かつ、重要な問題を検証できるかどうか」が、科学者の質を左右します。

身もふたもない話ですが、自然はただ私たちの前にあるもので、科学的な検証は再現性のあるものなので、自分がめくらなくてもそのカードがめくられることもあります。

だから競争も起こるのですが。

話を元に戻すと、良い研究をするには、自分が立ち向かうべき課題を明確にし、目的やアプローチを綿密に計画しましょうということです。

センターピンを倒す

私の研究室で新たなプロジェクトを設定するときに、必ず「問い」と「意義」を言語化することが求められます。

この2つがしっかりした研究は、分野に新たな可能性をもたらすセンターピンとなり得ます。

問い(ここでは作業仮説と同義)を持つことで、出てきた結果に対して議論ができるようになります。

すると、単なる記述的な研究を抜け出すことができ、さらなる仮説の設定・検証という科学的なプロセスを踏むことができます。

自分や周囲の方の過去の状況を振り返ると、意外とこの概念が抜け落ちている場合が多く、「こんなデータが出ました。でも何を示しているかは分かりません。」という結論になっている発表もよく見てきました。

問いを立てて、それと合致していたのか、反対なのか、別の可能性なのかという分岐を細かく作ることが、研究に”深さ”を与えてくれるのだと思います。

 

次に重要なのはその意義です。

「植物の側根は何本あるでしょうか?」という問いは検証可能ですが、それ自体には特に大きな意義を持ちません。

そのため、意義ある研究かどうかを自問自答し、どこに新規性・波及効果・基礎科学的な面白さを見いだすのかを「研究を始める前に」きちんと決めることが大切です。

もちろん進めていく中で意義が変わっていくこともありますが、「この遺伝子が面白そうだから欠損変異体を作ってみよう」という「やってみよう的なアプローチ」は、どちらかといえば失敗する可能性が高いと思います。

意義を考える上では、研究成果が、「何通りもつながりのある七並べ」と思うといいでしょう。

トランプゲームでは左右のどちらかにしか次のカードを出せませんが、研究の七並べは、何方向にも次のカードが出せるハブのようなポイントがあります。

これを上述のセンターピンに当たるものです。

このような、発展性の高い一枚を予測するには、すでに場に出ているカードをよく知り、勘所を養う必要があります。次の段落でもう少し掘り下げてみます。

この段落で言いたかったこととしては、問いを立てないとカードはめくれないし、どこかのカードをめくるとしても、センターピンをめくろうねということです。

センターピンを見つけるには自分の席から、カードを眺める

さて、センターピンを見つけるには、場に出ているカードを理解することが大事だと言いました。

次にやるべきことは、場に出ているカードに論文で書かれた内容以上の意味付けをすることです。

つまり、レビュー論文を書くような気持ちで、それらを有機的に繋げてみようということです。

これをすることで、「実はここに重要なカードがあるのではないか?」「この問題は論文Aの情報と、論文Bの情報を組み合わせることで解けるのではないか?」というヒラメキが生まれます。

ここが研究者の腕の見せ所の一つなのかもしれませんが、一見別々の情報をうまく統合できたために、筋のいい仮説を立てられたというケースはいくつか知っています。

この時に、自分の専門分野(自分の視点)で眺めることで、何かが見えてくる場合があります。

例えば、私の専門は植物の生化学ですが、栄養学的な視点で書かれた論文と生物物理学的な視点で書かれた論文から、生化学的な仮説が生まれることを経験しました。

もともと、2つの論文は出版時期がそれほど近くなかったにも関わらず、対象やアプローチが異なっていたために、後に出た方の論文では私が気づいたカードを見落としていました。

レビューを読むことも大事ですが、それと同じくらい、自分でレビューをして、仮説を作ってみることが、オリジナリティの高い研究をする上では大事なのかもしれません。

ざっくりまとめると、先行研究をよく理解すると、自分の専門領域での意義づけがしやすくなるかもよということでした。

最後に

僕はまだペーペーのペーペーで、研究論を偉そうに語るような立場ではありません。

しかし、恵まれた環境に身を置かせてもらっているので、学びを少しでも還元できたらと思い、このような情報発信をしています。

この記事の内容が的外れだ感じる方もいると思いますし、賛成してもらえる方もいると思います。

ぜひいろんなご意見をお聞かせいただければ幸いです。